二代目助手席日記・その4(山梨チビが採れなかったお話編) 昨日、久しぶりにIさんとお出掛けをしました。 実は、私、この4月に転勤になりまして、転勤直後の今は、1日も早く新しい職場環境に慣れ仕事を覚えるため、毎日非常に緊張した日々を過ごしているのです。当然、物凄く疲れます。なので、休日は自宅に籠って眠っていたい……と言うのも、本音だったりします。 でも……。 「せめて月に1日は二人で過ごせる時間を作りましょう」 と言う約束でお付き合いを始めたはずなのに、家族の怪我や仕事が重なり、Iさんとはすでに3カ月ほどすれ違ってしまっています。最後に二人でお出かけしたのは、何と初詣なのです。それって、いくらなんでもあんまりなのでは?と思い、疲労困憊した老体に鞭を打って助手席に乗り込みます。 私:「だから、もしも途中で眠っちゃったらゴメンね。」 Iさん:「そんなこと、全然問題ありませんよ。」 と言いつつ、今日は山梨県に向かいます。 Iさん:「今日は、採集と観光をします。」 チビクワガタの採れるポイントがあるそうで、 Iさん:「前に見つけておいたけど、一緒に採集しようと思って、割らないでおいた材があるんですよ。だから、採集は30分で終わります。」 とのことですが、30分で終わる……わけがないですよね、この人の場合は。^^; でも、本人が30分と言うのだから、90分以内には終わるんじゃないかな?と、ぼんやり思いながら、ポイントに到着。桜が何本か並んでいるだけの場所で、近くの土手に淡いピンク色の花が咲いているのが見えます。あれ?と思ってよく見ると、イカリソウです。イカリソウは、比較的育てやすい山野草ですが、最近めっきり野生の個体数が減少し、自生しているものを見かけることが少なくなりました。今日こんな所で出会えるなんて予想外のことで、私にとってはかなりの感激です。 Iさんは不思議そうな顔をしていました。クワガタには詳しくても、植物にはまったく興味がないようです。きっと、クワガタ採集の時に、気付かないまま貴重な植物を踏み潰していることも多々あったに違いありません。 イカリソウをみつけて喜んだ後は、Iさんがみつけておいてくれたチビ材割りを始めましょう。 Iさん:「前に来た時、ちょっと割っただけで1成虫が出ましたから、楽勝ですよ。」 全身から自信が溢れておりました。 ところがですねぇ、その材、割れども割れども、虫はさっぱり出てきません。30分が過ぎ、1時間が過ぎ……。マズイ、Iさんは、本気モードになってしまっている!Iさんがこうなってしまうと、絶対に目的の虫を割り出すまでは動きません。採集って言うのは自然が相手なんだもの、思い通りにならない時だってあります。そう言う時には、諦めることだって大切な決断なんですけどね。やっと3カ月ぶりに二人で出かけて来たと言うのに、このまま暗くなるまでここで材を割り続けて時間オーバーになってしまうのでしょうか?何とか、Iさんの気持ちを他にそらせる方法を考えなくては……。 山梨チビポイント 私:「ねぇ、今日は、採集と観光が目的なんでしょ?観光って、どこに行くつもりだったの?」 Iさん:「甲府に行きます。」 ? Iさん:「甲府に、何とか石があるじゃないですか。それを見ましょう。」 ?? Iさん:「石、好きでしょ?」 ??? 私:「石って、もしかしたら、宝石のこと?」 Iさん:「うん、水晶の産地ですよね。加工所を見に行こうかなって思ってね。」 かつて山梨県では良質な水晶が取れたと言う経緯があり、甲府には今でも宝石加工所がたくさんあるのです。 もしかしたら、Iさんが私に何かプレゼントしてくれるのかな?わ〜い♪ と、一瞬嬉しくなったのですけど、でも、ちょっと待てよ。Iさんって、そう言う気がきく人ではないですよね。 私:「宝石が嫌いな女の子って少ないと思うよ。でもね、女の子を加工所に行ったら、“これ、欲しいなぁ”って言われる可能性が高いんじゃない?Iさん、困っちゃうんじゃないの?」 Iさん:「それは困る……。それは考えていなかったです。」 あはは。Iさんらしいですよね。^^; この後、宝石加工所をスルーしたのは、言うまでもないことです。 甲府から韮崎まではすぐだそうです。甲府まで来たのなら、有名なオオクワ産地である韮崎も見ておきたいなと思いました。それで、かつて(20年も昔のことだそうです)Iさんがオオを採集したポイントを案内していただいたのですが、さすがに、20年の歳月は厳しいものですね。およそオオがいそうな感じではありません。 ま、一度は韮崎のクヌギ林を見ておきたかったので、これはこれで行ってみた価値はあるのかな?とは思います。 道すがら、満開の桜の花を通り過ぎます。 私:「Iさんとお花見ができて嬉しいなぁ。そうだ、お団子買おうよ。お花見団子。一緒に食べませんか?」 Iさん:「この先に“道の駅”がありますから、そこで捜してみましょう。」 と道の駅に到着。お団子を探して中に入ると……入口付近に、きれいなバラの花束が置いてあるのです。朝市などで出荷できない丈の短い(要するに規格外品ね)生花が安価に販売されていることはよくあることですが、このバラは、ステムが長い規格品です。それが、10本で198円。値段を間違えてるんじゃないかしら?いいなぁ……。 Iさん:「プレゼントしてあげますよ。」 バラ で、バラの花束と、お団子と、それとIさんはなぜかザルを持ってレジに並びました。 妙なお買い物ですよねぇ。ザルって、いったいどうして?何に使うのかしら? 道の駅を後にして、次に向かったのは……水溜りのような所。池と言うか沼と言うか。Iさんは、そこへ、ザルを持って近づいて行くのです。 Iさん:「ゲンゴロウとタイコウチがいるんです。ザルですくおうと思って」 そうか、ザルはそのために買ったのね(納得)。でもねぇ、まだ4月じゃないですか。彼らが冬眠から目覚めるのは、大体田植えの頃だと思うんだけどなぁ。 かなり執念深く探していたIさんですが、見つけられたのはオタマジャクシだけでした。 山梨タイコウチポイント その後は、御殿場まで戻って来て夕食を食べ、御殿場高原ビールで有名な観光施設(桜の名所でもあります)に立ち寄りました。御殿場では、ちょうど今、桜が満開なのです。今年は控えめなライトアップだった上、9時になった途端に最小限のライトのみを残して消灯されちゃったんです!残念!それでも、Iさんと一緒に満開の桜を見上げながら歩くのは、とても嬉しかったです。 Iさん:「灯りが消されてしまったのは残念ですけど、でも、見事な桜ですね。(ここの夜桜見物は)来年の楽しみにしておきましょう。」 そうですね。来年の桜も再来年桜も、Iさんと一緒に見ることが出来たらいいな。私も、そう願っています。 チビもオオクワもゲンゴロウもタイコウチも見つけられなかったのに、こんなに晴れやかな気持ちになれたのはどうしてなのでしょうか?不思議です。 だから、また行きましょうね、Iさん!次回こそ、必ずチビを採りましょう! |