二代目助手席日記・その5(マメは幼虫・ルイスは1匹・マグソは飛ばず編)


Iさんと、和歌山ルイスツノヒョウタンクワガタの採集を約束したのは、初詣の時(初詣・三嶋大社編参照)。月日は流れ、時は春。少しでも渋滞を避けようと、連休2日目の4月30日深夜に車を走らせ、朝5時半。“あっと言う間に”和歌山県に到着しました。

普段、私は、助手席で眠ることはまずありません。Iさんが運転してくれているのに私が眠っているなんて申し訳ないですし、それに、Iさんと一緒に過ごせる貴重な時間を眠って過ごしてしまうなんてもったいないもの!
……なのですが。今回、往路では、異常なほど眠ってばかりいました。このところ、慣れない仕事に眠れない日が続いていたものですから、それで、つい、眠り込んでしまったのだと思います。お蔭で、“あっと言う間に”和歌山県に到着しちゃってた!のですけど……Iさん、ごめんなさい。

途中で、クジラの像を発見。かつてクジラ漁が盛んだったこの町は、現在は、ホェールウオッチングに力を入れているようです。と言いつつ、お土産物屋さんでは、“クジラの佃煮”が販売されていたりもするので、グリーンピースに睨まれたりしないのだろうか?と、余計な心配をしてしまいました(が、クジラの佃煮は美味しかったです♪)。

クジラクジラ

クジラの件はともかく、マメクワガタのポイントを目指しましょう。

マメのポイント近くで、日の出の時刻を迎えました。なかなか美しいですね。
日の出日の出

朝日を見ながら照葉常緑樹の林を進んで行くと、何と、大きなウサギが座っています。海のすぐ脇にウサギがいるって言うのも、私にとってはちょっと不思議な光景でした。
うさぎうさぎ

さて、マメポイントは……。
マメポイントマメポイント

Iさん:「1月に、材を見つけてあるんですよ。1匹取り出しただけで、あとはそのまま残してあります。」
……Iさん、同じセリフを、2週間前に、山梨チビポイントでも言ってませんでしたっけ?^^;
間もなくそのマメ材を発見して、削り始めたものの……はい、結果は、皆さんが想像されたとおりです。でも、ま、他力本願採集ばかりでは、せっかく和歌山まで来た甲斐がありませんからね。ここは1つ、私が自力で捜してみせましょう。
私:「ちょっとだけ、マメ材のヒントを教えてくれませんか?」
Iさん:「倒木にも立ち枯れにも入ってます。柔らかく、白っぽい材の方がいいです。」
私:「水分量は?」
Iさん:「多からず、少なからず。」(……って、それじゃ全然わからないよぉ)
と言う訳で、私も手当たり次第に材を削ってみたのですが、全然出ませんねぇ。ふと見ると、Iさんは、幼虫をゴロゴロと割り出しています。
Iさん:「成虫が出ないな……。」
マメがいっぱいマメがいっぱい

もっと粘れば成虫も出たのでしょうけど、今日の本命はルイスなのです。マメに時間を取られてルイスが時間切れになってしまうと悲しいので、1時間ほどでマメは切り上げることにしました。
これだけ幼虫が出れば、♂♀は揃うでしょうからね。よしとしましょう。

次はルイスツノヒョウタンクワガタを目指します。
ルイスは、もともとは南方のクワガタのようで、本州では今のところ和歌山県だけで採集記録があります。きっと南の島から流れ着いた個体が、たまたま棲み付くことが出来たのが和歌山県だったのでしょうね。
さて、ルイスのポイントですが、私の地元では見かけないやや大きめなシダ植物も自生しており、ハブがいそうな感じもします。一方、キンラン(黄色い花の咲く野生ラン。絶滅危惧種U類)も自生していて、日本的な雰囲気もあります。ちょっと不思議な森です。
Iさん:「1月に、材を見つけてあるんですよ。1匹取り出しただけで、あとはそのまま残してあります。」
えっ?それって、つまり、また…ってことですかぁ?^^;
ルイスの材は、赤っぽいもので、色的にはツヤハダ材に似てます。ただ、ツヤハダ材よりはずっと柔らかいので、私にも楽に削れます。
間もなく、ルイスの幼虫が出てきました。よしよし。とにかく虫が入っていることは確かなようです(成虫なのか幼虫なのかはともかくとして)。
幼虫が1匹、幼虫が2匹、幼虫が3匹……やっと成虫が出たと思ったら死んでいるし〜。幼虫地獄ですねぇ。
それでも、10頭以上の幼虫を割り出した頃、やっと生きてる成虫が1匹だけ出てきました(ホッ…)。
ルイスツノヒョウタン♀ルイスツノヒョウタン♀

成虫は1頭だけですけど、幼虫が10頭もいれば♂♀は揃うでしょうから(注:マメもルイスもマット飼育が容易)、このくらいで完了としておきましょう。こちらも採集時間は1時間程度でした。

さて、マメとルイスを終えて、次は……何と、奈良県マグソクワガタのポイントに行くのだそうです。
静岡県(の東の端)から和歌山県まで日帰り採集に来ただけでもムチャなことなのに、さらに奈良県にまで足を伸ばすなんて……。
Iさん:「ここから3時間くらいですし、去年は60匹くらい採ってますからね。楽勝ですよ。」
Iさん、ほ、本当に、大丈夫なんですかぁ?

目的だったルイスを採ったのだし、後は、名物料理を食べたり、観光ポイントで写真を取ったりしながら、安全にゆっくり帰ればいいじゃないの……と私などは考えてしまうのですけど、Iさんに、そう言う大人の判断が通じるはずもありません。それに、私はまだマグソの♀を採集したことがないので、簡単に採れるなら足を伸ばしてもいいかな?と、思いました。

その後、Iさんは、奈良県を目指して、延々3時間ほど車を走らせたようです。が、私はと言うと、相変わらず助手席で眠り込んでいたので、あっと言う間に奈良県マグソポイントに到着。

途中で、アユの塩焼きを売っていたのを見つけたIさん。
Iさん:「Kちゃん(私のこと)、アユ、食べませんか?」
あゆの塩焼あゆの塩焼

私:「私は食べたくないです。」
Iさん:「それでは、運転を代わってください。」
アユの塩焼きを買って、嬉しそうに助手席に乗り込むIさん。
Iさん:「う〜ん、うまい♪ 山梨のより厚くて美味しいです。」
そう言えば……前日、Iさんは、山梨でヤマメの塩焼きを食べてましたものね。ちなみに、山梨のヤマメは400円、奈良のアユは500円です。川魚1匹500円って、相場なんでしょうか?私の感覚では、高い気がするのですが……。でも、Iさん自身が満足しているようなので、まぁ、よしとしましょう。

さて、奈良のマグソポイントは……山奥の河原で、車も人も殆ど通りません。
この日のポイント(マメもルイスも)はどこも人通りが少なかったのですけど、中でも、マグソのポイントは、万が一ここで事故ったら死体が発見されるまで何日かかるんだろ?って不安になるくらいの場所。つまり、完璧なまでに、二人だけの世界なのです。
そこで、ふと気付くわけです。そう言えば、確か、今日は、デートだったはずでは?う〜ん、デート。デートだったはず、なのよね……。旅先での非日常的な開放感。そして、二人だけの世界。美しい景色。……なのに、この状況は、何?
Iさんは、すでに一人で網を片手に河原を徘徊してましてね、もう、100%採集モードなわけなんです。はっきり言って、私のことなど、まったく眼中にないのです。
つまり、私は、Iさんにとって、マグソ1匹の価値にも及ばないってこと、なのですよ。 ^^;
……こりゃ、当分、“危険な進展?!”はなさそうですね。^^; 
マグソポイントマグソポイント

危険な進展はともかくとしても、肝心のマグソもまったく飛んではくれません。虫がいないのでテンションが下がり、口数も少なく、まるで元気が出ません。お日様も隠れたままなので気温も低く、私は、寒くて寒くて、それに、何だか目眩までしてきました。
考えてみると、この日の朝食は、マメ採集の前に、コンビニで買ったサンドウィッチをちょっと食べただけなのです。その後、飲まず食わずで採集を続け、時間はすでに2時半を回っています。なので、当然のことですが、物凄くお腹が空いていたのです。
しかし、ここは山奥です。食事のできる場所などありません。Iさんは、相変わらず採集モードで、文字通り寝食を忘れて網を振り回しています。とても、
「お腹が空いたので採集を切り上げたい」
と言い出せる雰囲気ではありません。だって、それ、私のわがままじゃないですか。そんなことを言ったら、こんな遠くまで運転をして来てくれたIさんが気の毒です。乗せて来ていただいた立場としては、Iさんの気が済むまで、待つしかありません。
が、しばらくすると、さすがのIさんも諦めたようです。
Iさん:「マグソ、諦めますか?」
この言葉に、私が、どれほどホッとしたか、わかります?ああ、やっと食事ができる……。
しかし、ですよ。私は、まだまだIさんと言う人を甘く見ていたってことがわかりました。
Iさん:「マグソは諦めて……この近くに、キンキコルリとニセコルリのポイントがあります。どちらがいいですか?」
ど、どちらがいいかって? この期に及んで、別のポイントで、まだ採集をするの??
私:「ねぇ、本当のことを言っていい?」(悲壮感がいっぱい)
Iさん:「はい、いいですよ。」
私:「お腹がすいて、ツライの……(涙)。」
この時、Iさんは、
「あっ」
って表情をしたんですよ。一瞬で、採集者の顔から、いつものやさしい表情に変わったのがハッキリとわかりました。
私:「もう、採集は、イヤ。とにかく、何かあったかい物が食べたい!」
道の駅まで車を飛ばしてくれて、やっと有り付けた食事がこれ。「イザサ(笹)寿司とキツネうどんのセット」です。涙が出るほど美味しく感じたことは、言うまでもありません。
イザサ(笹)寿司とキツネうどんのセットイザサ(笹)寿司とキツネうどんのセット

食事の後は、「キンキコルリとニセコルリは次回の課題」にして帰路につきました。復路では、ちょっとしたトラブルがあってIさんとケンカ(!)をしたりもしましたが、ケンカの眠気予防効果は大きいようで、お蔭で居眠り運転をすることもなく(復路は私も運転したのです)、午前0時30分頃に無事帰宅できました。
なので、ケンカも悪いことばかりでないとは思うのですが……仲直り、出来るかな?もしかしたら、これが最後の「二代目助手席日記」になったりして。^^;

いろいろありましたが、マメとルイスは採集できました。一応目的は達成できたと言うことで、めでたしめでたしです。
さらっと書いてしまっていますけど、案内してくれる人がいなければ、私が和歌山のルイスを採集するなんて、ほぼ不可能なことなのです。いつものことだけど、Iさんにはありがたいなって、感謝しています(そう思ってるなら、わがままを言っちゃダメなんですけどね。ごめんなさい)。
Iさん、今回もお世話になりました。泣いたり笑ったりで、楽しかったですよね。あはは。これからも、どうぞよろしくお願いします。



二代目助手席の部屋へ戻る    TOPページへ戻る
2011.04.30