先週末フランスはいきなり夏を思わせる陽気となり、じっとしていろと言う方が無理!という気候でした。 仕事の疲れがたたって、土曜日は午前中母狸の買い物につきあった後は、昼食後睡魔との戦いに敗れ昼寝をしてしまいました。 起きたのは午後6時! それから唐突に「明日は採集にいくから皆早く起きるように!」と指令を出すと同時に、 軽いウォーミング・アップ代わりに早めの夕食を取って、ORSAYに散歩に行こうということにしました。 ORSAYとは何を隠そう、私のユーロミ連敗記録更新の舞台であり、 以前Bさんに紹介していただいたホーム・ページの管理人(フランス人です)の方が、 「その辺ならば、夕暮れに飛んでいるよ!」 と教えてくれた場所です。 自分なりに良さそうな森をみつけたのですが、とにかく連敗続き。 当然ながら土曜日も連敗記録を「8」に更新したのみで帰宅しました。 翌朝、こういう時だけは早起きの出来る狸は、6時に起床するとともに、 母と二匹の子狸を叩き起こし、出発準備にかかりました。 母の顔造り(?)に若干時間を取られましたが6時半過ぎには出発することが出来ました。 今日の狙いは当然ヨーロッパコルリです。 採集地としては、いくら何でも片道700KMを日帰り出来る訳は無いので、 某ポイントはあきらめ、取りあえずパリから一番近そうな山を目指しました。 パリから真東ドイツ国境の方面にNANCYという都市があります。 そのNANCYから東南へ20KMほどいくと漸く山と呼べる代物が現われます。パリからは片道350KMほどでしょうか。 今日の目的はその近辺を走りまわり、ブナとコナラを探すことです。 随分飛ばしたつもりではありますが麓のRaon l'Etapeという村に着いた時には4時間弱かかってしまっていました。 細い登り途を車で運転していると、福島に戻ったような錯覚を覚えました。 途中に車を停める場所が無いことも桧枝岐に似ている気がします。何か盛り上がって来たなぁ!! 漸く車が駐車できる場所を見つけ、木々を見て回ります。有りました。確かにブナです。 でもコルリもど素人の狸は、某昆虫ビデオのように何処を向いてもコルリだらけ・・・・ という光景を想像していたものですから、シーンと静まり返ったその場所に戸惑いを覚えざるを得ませんでした(何とお気楽な)。 一時間ほど木々を見て回る内に、センチコガネやハンミョウ、 そしてもはや私にとっては「いつものやつ」と呼べる存在となっているフランス産コメツキが迎えてくれました。 やっぱり素人では無理だよなぁと駐車している場所に戻って来た時にふと一本の未だ若くて細いブナの木が目に入りました。 なんとなく近づいて頭上の枝葉をルッキングしていると、高い葉の周辺に飛んでいるものがあります。 その飛び方はハエや蜂の飛び方ではなく、ゆっくりとしたものでした。 「母さん、捕虫網持ってきて」 私の気配が妙なことに気が着いた母狸は、「どうしたの?何か居たの?」と興味津々で近づいてきます。 「判らん。もしかするとコメツキかもしれないけれど・・・」 無闇に期待しようとする自分を抑えながら、飛行物が止まったあたりをサッと一振り。 ポタッ!!!あっ、落ちた。 と思うまもなくそれは飛び立ちました。小さいその虫は強い日光の中で青く輝いています。 自分でも判らない奇声を発しながら5メートルほど追いかけて運良く網に捕まえることが出来ました。 興奮で震える手で、捕虫網を手繰っていくと・・ 「コルリだぁ!!!!」 人気の無い、フランスの片田舎の山に響き渡る中年日本人の声!!! 「やったぁ!!!!!」 感化されやすい母と子狸の声!! この時の気持ちは、これからも決して忘れることは無いでしょう。 またもう10分ほど息を殺して同じ木を見ていると、今度は先ほどよりも大きい個体が飛んできて、これまたGET!! どうやらペアだったみたいです。 さぁ〜、こうなると素人は怖いものです。すっかり自信をつけてしまい、頭の中は既に「タコ採れ状態」。 しかし・・・・・・。 このあと幾らまってもコルリは現れてくれませんでした。 ここは500M程度の山だったので、地図を見ながら数十キロ先の1000Mクラスの山へ移動することにしました。 移動中の車の中では、すっかり頭は「某昆虫ビデオ状態」です。 そしてたどり着いた1000M級の山(DONON山といいます)はブナと思われる木は沢山あり、 流石に標高が高いせいか新芽も沢山あります。 でも、、、、肝心のコルリが居ません(T_T)! 先ほどの山でブナの根元に敷き詰められていたブナの実が見当たらないのです。 ブナに似ていて違う木というものは有るのでしょうか? 結局この場所ではコルリの影さえも見つけられないまま、時間切れとなってしまいました。 唯一の救いはキンイロオサムシの轢死体を見つけたことで、 その美しさといったら我が故郷北海道のオオルリオサムシも裸足で逃げ出すほどでした。 「この場所には何時かトラッブを仕掛けてキンイロオサムシを採りに来よう!」 と性懲りも無い狸でした。甲虫好きの皆様には喜んでいただけるものではないかと思います。 帰り途は当然渋滞にも巻き込まれ5時間半という道のりでしたが、その道中、寝ている家族を横目に見ながら、 ずうっと今日一日の出来事を再生していました。 どうして、あの場所に、あのペアだけが居たのだろうか・・・・・ それはどう考えても、あいあんさんが前の日に置いていってくれたような気がしてなりません(ナイナイ!)。 でも、考えてみれば、異国において、完璧に自力で新規開拓を試みて、1ペアとは言えども採ることが出来たのです。 これはビギナーズ・ラック以外の何物でもなく、自分には奇跡のように思われます。 今までだって日本では、必ず偉大な先人達の残してくれた情報を頼りに、人の後を追って採集していた狸です。 ちなみに母狸は子狸達に 「お父さん来週は何処に行こうって言うだろうね」 と一応の理解は示してくれているようです・・・・(^^)。 では、また続報をお届けできることを願っております。 子連れ狸 in Paris ご感想はこちらまで |