あいあんさん、皆さん、こんにちは。 かつて子連れ狸氏のフランスでの採集記をとても楽しく拝読していた自分が、よもやフランスから採集記を送るように なるとは、夢にも思いませんでした。子連れ狸氏のお人柄あふれるほのぼのとした文体にはなかなか近づけませんが、 自分を触発していただいた氏の採集記の続編となることができればと願い、折に触れ投稿させていただこうと思います。 フランスに来てから4ヶ月、仕事も生活も少しずつ慣れてはきましたが、相変わらず昆虫とは縁遠い日々となりがちです。 家族に言わせれば、何も花の都パリに来てまで虫捕りなどする必要はどこにもありません。 東京よりもずっと早く深まるパリの秋の真っ只中で、自分の昆虫に対する思いはますます薄れていくばかりです。 ところが、ふとしたことで、スイッチが再び入ってしまうものなのですね。 10月末の週末にキリスト教の祭日を加えた三連休の中日、パリの南50kmほどのフォンテーヌブローという所へ家族で ドライブに出かけたのですが、広大なフォンテーヌブローの森の中で、なんと、ブナの森に出くわしてしまいました。 パリの周辺には案外広葉樹の森が多いのですが、ほとんどがカシワやクリ・マロニエなどが中心で、 ブナの木は、これまではカシワの森の中に点在するのを確認した程度でした。さすがは緯度の高いフランス、よもや平地でも 密度の濃いブナの森が見られようとは、ちょっとした驚きです。 思わず車を路肩に停め、家族の冷たい視線をよそに、数分間だけ林縁を探索。すると、ほどなく、湿って黒ずんだ 落ち枝に、コルリのものらしき産卵痕が見つかりました。早速その材を割ってみましたが、残念ながら中に入っていたのは アブのものと思われる幼虫だけ。家族一緒のドライブの途中なので、泣く泣く探索を切り上げました。 しかし、こうなると頭の中はコルリのことで一杯です。これまでも、もしかしたらパリ近郊でもコルリは見つかるかもしれないと 思いつつも、実際に生息の痕跡を発見してしまったからには、もうたまりません。どうしても採ってみたいという思いがムクムクと 湧き上がってきます。 翌日の祭日はあいにく朝から雨模様。自分の邪心に天はちっとも味方をしてくれないようです。 それでも家族に「3時間だけ」との許しをもらい、車を飛ばしました。 何もフォンテーヌブローにまで行かなくても、パリにもっと近いランブイエの森にもブナ林はあるだろうとタカを括っていたのですが、 残念ながら樹種が違っていてハズレ。時間を節約するためにも近場採集をやみくもに追求する自分の採集姿勢が、 見事に裏目に出たようです。 これだけでは悔しいので、だいぶ遠回りですが、ランブイエから昨日行ったフォンテーヌブローへ向かうことにしました。 雨はますます激しく降ってきたのですが、スイッチが入った自分をもう何ものも止めることはできません。 家族からもらった「3時間」のリミットを大幅に超過することが避けられない状況ですが、そんなことにはお構いなしに 昨日の地点に到着。雨に濡れながら、落ち枝を探します。 やはり、産卵痕は特段の苦労なく見つかります。日本のコルリと同様、湿って黒ずんだ細めの落ち枝を好むようです。 しかし、産卵痕はあっても、堅すぎて削れなかったり、割っても中身がないものばかり。雨が降りしきる中、 なかなか成果を出すことができません。 そこで、産卵痕の有無に関わらず、表面が黒ずんで割りやすそうな落ち枝を探すことにしました。 すると、これが効を奏したのか、ある材を割ると、黒灰色の食痕の中に、小さなクワガタ幼虫を数頭発見。 頭部の色が薄く、大きさといい、いかにも見覚えのあるコルリの幼虫です。成虫が潜んでいないものかと慎重に割り続けましたが、 残念ながら幼虫のみ。割りカスとともに持ち帰ることにしましたが、成虫まで育て上げることは自分にはたぶん無理でしょう。 その後幼虫を少しだけ追加したものの、雨が降り止まず、風邪を引かないうちに打ち止め。ああ、成虫が見られなくて残念。 でも、幼虫を確認できただけでも上々の出来事かもしれません。 ただし、帰りは、渋滞に巻き込まれるは、それを避けようとしてかえって道に迷うはで、散々でした。結局、家族からもらった 「3時間」は、2倍近くになってしまいました。 次の機会には、是非とも天気の良い日に、もっと時間をかけて探索してみたいものです。 でも、家族との約束を守れないようでは、次の機会は全く保証されないのでした。 えいもん in Paris ご感想はこちらまで |